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LPS動物経口投与試験

DSS 誘発大腸炎発症の予防効果(マウス)

潰瘍性大腸炎は厚生労働省の難治性疾患克服研究事業の対象疾患となっており、炎症性大腸炎の中でも完治に導く治療法が確立されていない疾病です。潰瘍性大腸炎の特徴は、炎症が直腸から連続的に広がっていく性質があり、便には出血を伴い、痙攣性の腹痛と頻回の排便をもよおします。重度になると、合併症を引き起こし、生体全体に影響を及ぼします。また、大腸癌への移行の可能性もあり、現在、治療法の開発が進められている疾患です。

本試験では、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)投与による潰瘍性大腸炎のモデルマウスを用いて、LPS投与による潰瘍性大腸炎予防の有用性について検討しました。※DSS投与は、潰瘍性大腸炎誘発モデルとして、臨床研究で広範に利用されている方法であり、マウスに2.5% DSSを投与し続けた場合、体重減少が見られ、3~4日後には出血性の便が認められます。

C3H/HeNを用いて潰瘍性大腸炎モデルを作成しました。マウスはパントエア・アグロメランスLPS(LPSp)群とコントロール群に分け、LPSp群には50ng/mL(約20μg/kg.day)のLPSpを2週間又は4週間で自由飲水させました。LPSpの飲水投与終了後、ストレッサーとして2.5%DSSを飲水投与しました。本実験では、ストレッサー投与の際に、LPSpの同時投与は行いませんでした。

それぞれの病態に対してスコアをつけ、予防効果を評価しました。体重減少なし血便なしを0点、体重減少のみを1点、体重減少なし軽度血便(便の表面に血液が付着している場合)ありを2点、体重減少あり軽度血便ありを3点、体重減少なし重度血便(便に血液が混ざっている場合)ありを3点、体重減少あり重度血便ありを4点とし、LPSp群、コントロール群3匹ずつの平均をとりました。

図1は、LPSp投与 2週間+DSS投与9日間の、マウスの体重変化と病態変化を観察したものです。体重変化では、LPSp投与群の方がコントロール群に対して、体重が減少しない傾向がみられました。病態変化においても、LPSp群の方がコントロール群に対して、血便の程度が軽減することが明らかになりました。

図2は、LPSp投与期間4週間のデータです。体重変化では、LPSp投与群の方がコントロール群に対して有意に体重減少が少ないことが明らかになりました。病態変化では、7日目には有意に差が見られ、LPSpが潰瘍性大腸炎に対する予防効果を発揮していることが明らかとなりました。

図1 DSS投与によるマウスの体重変化と病態変化:LPSp投与期間2週間

 

図2 DSS投与によるマウスの体重変化と病態変化:LPSp投与期間4週間

 

本実験系ではストレッサー(DSS)投与後にはLPSpを投与していないため、LPSpの効果は予防的であり、かつ効果が持続していることがわかります。

潰瘍性大腸炎に関する報告として、2004年にcellに掲載された論文では、マウスに抗生物質を投与して腸内細菌を死滅させた後、大腸菌LPS 50mg/mLまたはグラム陽性細菌の細胞壁成分であるリポタイコ酸(LTA)12.5mg/mLを飲水投与させ、その後2%DSSで潰瘍性大腸炎を誘発させています(*1)。その結果、LPS、LTAの投与により、潰瘍性大腸炎を防いだという結果が得られています。この結果は、TLR4や、TLR2(LTA)による免疫応答が腸管ダメージを防ぐこと、従って腸管の恒常性維持にはTLRの関与があることを示唆しています。

これに対し、本実験は、腸内細菌が存在した状態で、DSSにより誘発される潰瘍性大腸炎をLPSpが予防することを示したものです。

本試験結果は、2006年4月開催の、自然免疫賦活技術研究会において発表。

(*1)Recognition of Commensal Microflora by Toll-Like Receptors Is Required for Intestinal Homeostasis. Cell,vol.118,229-241,July 23,2004.

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