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免疫について

(6)マクロファージの活性化には段階がある

LPSはマクロファージを活性化する。マクロファージを活性化すると炎症が起こるのでは?という疑問を持たれる人があるかもしれません。ここでは、マクロファージの活性化について解説します。

マクロファージの活性化には、下図に示すように段階と方向性があります。

マクロファージの活性化には段階がある

口から摂取したLPSは、口腔から消化管の粘膜のマクロファージを活性化しますが、厳密にいえば、プライミング状態にまで活性化します。プライミング状態とは、戦う相手が出てくれば「戦うマクロファージ」に、治癒させる現場があれば「鎮めるマクロファージ」に、素早く移行できるスタンバイ状態のことです(*1)。ちなみに、プライミング状態から、「戦うマクロファージになる」か、「鎮めるマクロファージになる」か、「プライミング状態のままでいる」かは、接触する対象や仲間の免疫細胞が出す情報伝達物質によって違ってきます。

一方、LPSを血液中に注射すると、血液中マクロファージは一挙に「戦うマクロファージ」に活性化されます。

どうして反応が違うのでしょうか?それは、粘膜マクロファージと血液中マクロファージは、LPSに対する反応性が違うのです。口腔から消化管は、食事と共に細菌成分が取り込まれる場所であり、大腸には多くの腸内細菌が棲んでいます。粘膜マクロファージは、細菌成分であるLPSと出会っても、決してすぐに「戦うマクロファージ」にはならず、プライミング状態になるようにできています(*2)。

一方、血液の中は聖域です。血液中マクロファージは、細菌や細菌成分に対して、すぐに「戦うマクロファージ」となって、排除反応を起こすようにできているのです(注:ただし、LPSが微量の場合はプライミングに作用します)。

ところで、活性化とはプライミング状態を含めた言葉で、上述したように、口を通して入ってくるLPSは粘膜マクロファージをプライミング状態に活性化させるので、炎症を誘導することはありません。

では、マクロファージをプライミング状態にすることにどんな意義があるでしょうか。

マクロファージが働く状況というのは、①体の中の存在すべきでない場所(例えば、血液中や肝臓や肺などの臓器)に細菌やウイルスを見つけたとき、②細菌やウイルスが感染して異常になった自分の細胞を見つけたとき、③自分の細胞が癌の印を細胞膜に出しているとき、④自分の細胞が死んだ印を細胞膜に出しているとき、⑤酸化や糖化、切断を受けていびつになったタンパク質を発見したとき、⑥他の免疫細胞から異物があるという信号を受け取ったとき、です。こういう状況で、マクロファージはまず食べる(貪食といいます)ということで対処し、必要な場合には、情報伝達物質であるサイトカインを分泌して仲間の免疫細胞に状況を連絡します。

ところで、上述の状況に遭遇したとき、マクロファージが素早く対応してくれることが重要です。戦う場合も鎮める場合も、対応が遅れてはいけません。そのためにはマクロファージが常にプライミング状態にあることが理想なのです。ところがこのマクロファージの状態が、加齢やストレスで、往々にして低いレベルに落ちこみます。

よく風邪をひく、けがをするとなかなか傷が治らない、薬をもらっても良くならない病気がある、というのはマクロファージが率いる自然免疫力が低下している可能性があります。そういう時に、LPSを口から摂取することは、安全で有効なマクロファージの活性化(プライミング)方法なのです(*3)。

(*1)Alveolar macrophage phagocytic activity is enhanced with LPS priming, and combined stimulation of LPS and lipoteichoic acid synergistically induce pro-inflammatory cytokines in pigs.
Innate Immun 19: 631-643 (2013)
(*2)Human intestinal macrophages display profound inflammatory anergy despite avid phagocytic and bactericidal activity. J Clin Invest115: 66-75 (2005)
(*3)Oral administration of lipopolysaccharides for the prevention of various diseases: benefit and usefulness. Anticancer Res 31: 2431-2436 (2011)

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