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LPSと健康維持

(9)新型コロナウイルスとLPS

2019年12月末、中国武漢で始まった新型コロナウイルス感染症。コロナウイルスは、コウモリやラクダなど主に動物に感染するウイルスですが、時に人にも感染します。2002~2003年出現の重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルス、2012年出現の中東呼吸器症候群(MERS)ウイルスもコロナウイルスグループです(*1)。

ウイルス

武漢で出現した新型コロナウイルスは、重症度は高くないと考えられていますが、高齢者や基礎疾患のある人は重症化する傾向があり、死亡者も出ています。細菌感染の場合、抗生物質で抑え込むことができますが、現在のところウイルスを抑え込む薬はありません。ですから、発熱や咳を一時的に抑える対症療法薬は使うとしても、基本的には自分の免疫力で対応するしかありません。

新型ウイルスが出現した際に、私たちが困難に直面するのは、誰も、初めて遭遇するウイルスに対し体内に抗体ができていないこと、そして人為的に抗体を誘導するためのワクチンも間に合わないことによります(間に合わないというのは、人に注射するワクチンは、開発だけでなく、安全性試験や認可に時間がかかるためです)。

ところで、抗体を作る仕事は、免疫系のうち「獲得免疫」の仕事です。一方、免疫系には、抗体の有無に関係なく外来異物と戦う「自然免疫」があります。新型というのは「獲得免疫」にとって新型なのであって、「自然免疫」にとっては新型も旧型もないのです。ということは、自然免疫が活発に機能している人は、たとえ新型ウイルスに感染しても、回復が早いのです。

自然免疫を活性化する物質としては、乳酸菌のペプチドグリカン、キノコや酵母のβグルカン、グラム陰性細菌のLPSがあります。これらの成分はいずれも、自然免疫担当細胞であるマクロファージを活性化します。マクロファージはウイルスが感染してしまった細胞を食べて処理してくれます。ペプチドグリカン、βグルカン、LPSのうち、特にLPSは抗ウイルス因子(インターフェロンβなど)を誘導するシグナルを活性化します(*2)。従って、LPSを多く含む食品を普段から摂取することが、新型コロナウイルスに対する備えとなり、また感染した場合にも回復を早めることにつながるでしょう。

LPSは抗ウイルス作用のシグナルも誘導する

(*1)新型コロナウイルス感染症市民向け感染予防ハンドブック(監修:賀来満夫(東北医科薬科大学医学部感染症学教室、作成:東北医科薬科大学病院感染制御部・仙台東部地区感染対策チーム、発行:2020年2月25日)
(*2)TLR signaling pathways, Seminars in Immunology, 16: 3-9 (2006)

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