自然免疫応用技研株式会社

ひげ博士の最新免疫学講座

かげ

第73回

かじる話
(2025年12月 No.73より)

皆さん、こんにちは!ヒゲ博士じゃ。健康維持にはマクロファージの食べる力(貪食能)を維持することがとても大事と何度も言ってきたが、『食べる(ファゴサイトーシス)』だけでなく、『齧る(トロゴサイトーシス)』ということでも個体を維持しておるのじゃ*。トロゴサイト‐シス(trogocytosis)の語源は、ギリシャ語のtrogo(齧る、かじり取る)から来ておって、マクロファージが細胞どうし直接くっついて、少しずつ齧るように相手を調べる様子を表した言葉なんじゃな。マクロファージは、細胞に接触して齧ることで、相手の物理的な変化や分子的な変化を読み取っておるのじゃ。
たとえば、寄生虫のように体の大きな病原体は、丸ごと食べることができん。そこでマクロファージは、齧って傷をつけ、弱らせることがあるのじゃ。また、発達期の脳では、マクロファージの仲間であるミクログリアが、不要になった神経のつながりを「齧って取り除く」ことで、脳の環境、つまり恒常性を保っていることも知られておる。
このようにマクロファージは、隣り合った細胞を生きたまま少しずつかじり、その細胞の膜や表面の目印となるタンパク質を取り込むことで、「この細胞は元気か」「疲れておるか」「年を取っておるか」といった状態を直接感じ取ることができるのじゃな。つまり、トロゴサイトーシスはマクロファージの細胞接触による情報伝達の一つじゃから、これはマクロファージネットワークの一部として働いていると考えてもよいじゃろう。

*: Target cell cortical tension regulates macrophage trogocytosis. Nature Cell Biology (2025) 27: 2078-2088.

ひげ博士

出典:特定非営利活動法人自然免疫ネットワーク発行ニュースレター

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