自然免疫応用技研株式会社

ひげ博士の最新免疫学講座

かげ

第57回

細菌のEVの話
(2021年12月 No.57より)

皆さん、ひげ博士じゃ。ヒトが健康的に生きていくには共生細菌の働きが重要なことは良く知られておる。細菌からは酢酸や乳酸等が放出され有用な働きをしているが、免疫活性化物質の放出に関してはそれほど研究が進んでおらん。その中で最近注目され始めているのが、細菌のエクソソームである細胞外小胞(extracellular vesicles: EV)じゃ(1)・・・えっ、EVと言っても電気自動車ではないぞ。
すべての生物の細胞は基本的には柔らかい脂質の膜で覆われており、少しの変化で膜が小さな粒(小胞)となって放出する性質があるのじゃ。特に柔らかい膜を持っているグラム陰性菌はEV放出が盛んで、50年以上前からOMVs (outer membrane vesicles)として存在が知られておる。
OMVsにはLPSが主な免疫活性化物質として含まれておる。ヒトには大凡100兆個の共生細菌がいて、半分がLPSを持つグラム陰性菌じゃが、LPSがそのまま働くわけではない。LPSはOMVsが作られる時に、膜の成分として細菌から放出されて、ヒト細胞にたどり着き、情報を送るのじゃ。つまり、LPSはOMV (EV)に乗っていて、働きに出ているのじゃな。
ふむ、現代人のLPS不足には食事や環境からの摂取量減少の他に、腸内細菌のEV産生状態が良くないことが関係しているかもしれん。そうならば、LPS摂取に加えて、EV産生の良い育菌も大切なことになるかのう。

(1) PLOS Pathogens: May 13, 2021 https://doi.org/10.1371/journal.ppat.1009508 “Microbiota–host communications: Bacterial extracellular vesicles as a common language”

ひげ博士

出典:特定非営利活動法人自然免疫ネットワーク発行ニュースレター

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