免疫グロブリンのひとつ「IgG」の働きとは?基準値や病気についても紹介!

IgGは免疫グロブリンのひとつです。免疫グロブリンとは、血液や体液の中に存在しているたんぱく質(抗体)で、免疫機能に欠かせない働きをします。免疫グロブリンには、異なる構造と働きを持った5つの種類があり、病原菌やウイルスなどが侵入したときにみずから抗体として戦うものもあれば、体を守る抗体を作りだすものもあり、それぞれがあらゆる角度から体を守っているわけです。今回解説するのは、免疫グロブリンのなかでも血液中にもっとも多く含まれているIgGです。

また記事後半では、免疫機能を高めるために日常生活で気を付けたいことなどもご紹介しますので、合わせてご覧ください。

IgGとは

IgG

IgGは血液中にもっとも多く含まれている免疫グロブリンです。IgGは細菌やウイルスと結合して無毒化し、体を守る働きがあります。免疫グロブリンの約80%がこのIgGなので、免疫機能の主役級の働きをしているともいえるでしょう。

子どもの免疫にも重要な役割を果たす

生まれたばかりの赤ちゃんは感染症にかかりにくいといわれますが、実はここにもIgGが関係しています。

IgGは非常に小さく、母親のIgGは胎盤を通して胎児に移行することがわかっています。そのため、生後半年ぐらいまではこの抗体によって多くの病気から赤ちゃんを守ることができます。母親から赤ちゃんへの最初のプレゼントといえるでしょう。

IgGの構造と働き方

IgGの構造と働き

IgGを拡大して見てみると、上の図のように分子量が重い「重鎖」と分子量が軽い「軽鎖」が組み合わさったY字型をしています。左右に広がっているアームのような部分は0~180度近くまで開閉できるようになっており、ウイルスや細菌など(抗原)に合わせて形を変えることができます。抗原を発見すると、このアームの先端部分が抗原に結合して、その病原体の特徴を記憶し、排除するための抗体を作ります

では、IgGは具体的にどのように働いて抗原を排除しているのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

中和作用

中和作用

細菌が体内に入ると、細胞の表面にある「レセプター」と結合しようとします。レセプターとは、ウイルスなどの型に合う鍵穴のようなもの。細菌が持つ鍵とレセプターである鍵穴が一致してしまうと、体に害を及ぼします。IgG抗体が先に抗原の周りを取り囲んでしまえば、抗原は鍵穴と結合できなくなります。これを中和作用といいます。

オプソニン効果

オプソニン効果

体内に侵入した細菌やウイルスなどがIgG抗体と結合すると、免疫細胞である好中球やマクロファージが活性化されます。これらの免疫細胞は異物を食べて退治してくれる働きがあるので、IgGによって免疫細胞の食欲が旺盛になる、とたとえることができます。

これをオプソニン効果といいますが、オプソニンというのは「味付け」という意味です。IgGが味付けをして免疫細胞の食欲を増していると考えると面白いですね。

補体の活性化

補体の活性化

補体とは、抗体の働きを助けるたんぱく質分解酵素のことです。C1~C9まで9種類ありますが、IgG抗体が抗原に結合すると、まず、補体C1が活性化します。するとC1はC4を活性化し、連鎖して他の補体も次々に補体が活性化されていきます。

C9まですべての補体が活性化するとリング状の複合体を形成します。この複合体には細胞膜に穴を開ける作用があるため、細菌を死滅させることにつながります。

IgGの基準値と疾患

IgGの値は血液検査で調べることができます。基準値は870~1700mg/dLとされていますが、この基準値より高くなる、または低くなる場合に異常値とされ、以下のような病気が疑われます。

IgGが高い場合

IgGが基準値よりも高い場合は、自己免疫疾患、膠原病、悪性腫瘍、急性感染症、形質細胞性白血病などが疑われます。

IgGが低い場合

反対に、IgGが基準値よりも低い場合は、ネフローゼ症候群、γ-グロブリン血症、重症免疫不全症などが疑われます。

抗体検査でも主にIgGが調べられる

抗体検査は、ウイルスに感染したときに形成される抗体を調べる血液検査です。過去にそのウイルスに感染したことがあるかを調べられますが、抗体が形成されるまでに時間がかかるため、現在ウイルスに感染しているかどうかを調べることは難しいと考えられています。

抗体には全部で5種類ありますが、抗体検査では主にIgGとIgMを調べます。IgG抗体は感染してもすぐには作られませんが、IgM抗体は感染後最初に作られる抗体です。この性質を利用して、検査結果はIgGとIgMがそれぞれに陽性(+)・陰性(-)のどちらになるかで診断の材料とします。

IgG(-) IgG(+)
IgM(-) 感染していないか、感染後間もないため検査に反映されていない 過去に感染したことがあるが、現在は感染している可能性は小さい
IgM(+) 現在感染しており、感染後間もない 過去に感染したことがあり、現在も感染している可能性がある

免疫機能を高めるには

「免疫グロブリン」はタンパク質でできているため、良質なタンパク質を摂取することが免疫力を高めることにつながると言えます。肉、魚、卵、乳製品、大豆・大豆製品などをバランスよく食事で摂りましょう。また、適度な運動が免疫グロブリンを増やすことも分かっています。

さらに、細菌やウイルスなどとIgG抗体が結合することで活性化される免疫細胞・マクロファージは、異物を食べて退治してくれる働きがあるので、これを活性化させることも免疫力アップのポイントです。

マクロファージの活性化には、LPS(リポポリサッカライド)という成分が効果的であることが明らかになっています。免疫ビタミンとも呼ばれるLPSについては以下のページで詳しく紹介していますので、興味のある方はご覧ください。

免疫ビタミン「LPS」ってどんな効果があるの?

LPS活用事例

LPSは土の中などに存在するため、野菜や穀物、海藻類などに豊富に含まれています。しかし、農薬などによって細菌が取り除かれるとLPSも少なくなってしまうため、近年食事から取り入れられるLPSはどんどん低下していると言われています。そのため、サプリメントを利用したり、肌への効果を期待する場合は化粧品などを利用したりするのがおすすめです。

この記事の著者
やさしいLPS編集部

食用植物に共生するパントエア菌由来の“免疫ビタミン”LPSを提供する自然免疫応用技研株式会社です。当サイトでは、自然免疫、マクロファージ、LPSに関する情報と、当社の活動をお伝えします。

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