LPSは敗血症の原因になる?~LPSが体に及ぼす良い影響・悪い影響~

免疫細胞の一種であるマクロファージを活性化させ、免疫を上げる効果が期待できる「LPS(リポポリサッカライド)」。病気に負けない健康な体作りのためにも積極的に摂取したい、今注目の成分ですが、「LPSは敗血症の原因」と書かれている記事もあります。それが事実だとしたら、LPSを摂取することに抵抗を感じる方もいるでしょう。

そこで今回は、本当にLPSが敗血症の原因になるのか、そもそも敗血症とは何かということから、詳しく解説します。

敗血症とは

敗血症とは感染症によっておこる病気です。細菌やウイルスなどに感染し、本来無菌でなければならない血液中に菌やウイルスが入ったこと(菌血症)により全身に炎症が広がって、臓器の機能不全を起こしている状態のことです。

重症になると、うまく血液が循環できなくなって血圧が低下し、重要な臓器に酸素が行かなくなって多臓器不全を起こす「敗血性ショック」に陥ります。患者の状態にもよりますが、敗血性ショックを起こした場合の死亡率は平均30~40%と高く、日本では年間約10万人が敗血性ショックによって亡くなっているとされてされています。

敗血症の原因

敗血症の原因となるのは、大腸菌、コレラ、サルモネラのようなグラム陰性細菌や、ブドウ球菌、連鎖球菌のようなグラム陽性細菌といった病原性細菌(増殖力が異常に高い細菌や、粘膜に穴をあける毒素を持っている細菌)の感染です。インフルエンザを含むコロナウイルでも起こります。細菌やウイルスの成分が体内に入ると、免疫細胞がそれを感知してサイトカインやメディエーターを分泌して対処します。

・サイトカイン:免疫細胞が分泌するタンパク質
・メディエーター:細胞間の情報伝達に使われる物質

うまく対処できている間は体が適度に発熱し、免疫全体を活性化させるなど有益な効果が得られるのですが、免疫細胞が過剰に働きうまく対処できなくなると、敗血症を引き起こす可能性があります。

ところで、LPSはグラム陰性細菌が持つ成分であり、グラム陰性細菌に感染した場合に炎症を悪化させる因子のひとつとされています。そのため、LPSは「エンドトキシン」(日本語で「内毒素」)とも呼ばれているのです。

ただし、LPSを持っていないグラム陽性細菌やウイルスによっても敗血症は起こりますから、LPSだけが敗血症の原因になるわけではありません。LPS以外の細菌成分や「アラーミン(生きた細菌と戦うために免疫細胞などが産生した内因性物質)」も敗血症の原因になります。

LPSが体に悪影響を及ぼすかどうかはLPSが持ち込まれる場所で異なる

LPSは敗血症を引き起こす成分のひとつではありますが、LPSが身体に入れば必ず敗血症が起こるというわけではありません。悪影響を及ぼすかどうかは、LPSが持ち込まれる身体の場所によって異なります。

たとえばグラム陰性菌の一種であるコレラ菌が血管内に侵入すると、血液中の免疫細胞はコレラ菌のLPSに反応して炎症性サイトカインを分泌します。血液中にLPSがあるということは、血管内に細菌がいる証拠なので、免疫細胞が緊急事態だとして防御のための攻撃を始めるのです。

しかし、コレラ菌のLPSだけを抽出して口に入れた場合に敗血症になるのかというと、それはあり得ません。血液中に存在する免疫細胞と口や消化管に存在する免疫細胞は、LPSに対する反応性が違うからです。

無菌でなければならない血液と違い、口や消化管は環境細菌や常在菌が存在するのが当たり前の場所で、「細菌やLPSが入ってきたら戦わなくては」という世界ではありません。むしろ、無菌状態になるほうが異常事態であり、細菌やLPSとのコミュニケーションがないと免疫力が落ちてしまいます。

LPSが敗血症やその他炎症を引き起こすといわれているのは、病原性細菌(増殖力が異常に高い細菌や、粘膜に穴をあける毒素を持っている細菌)の感染や注射によって血管内や体内に直接持ち込まれた場合のことで、経口経皮で体を害することは決してありません。経口摂取の安全性を調べる動物実験では、動物実験で可能な最大量を3か月間食べさせ続けても体に異常が出ないことがわかっています。

経口摂取したLPSは体に良い影響を及ぼすことが一般的

LPSの経口摂取は無害であるどころか、体に良い影響を及ぼすことが一般的です。私たちの体内ではさまざまな免疫細胞が情報を伝達し合い、病原性細菌などの異物を食べて除去したり、抗体を作ったりすることで病気から守っています。

免疫細胞のなかには「マクロファージ」という、体内に入った異物を食べて除去したり、抗体を作る際の司令塔となるT細胞に異物の情報を伝えたりする重要な細胞があるのですが、経口摂取したLPSはマクロファージと結合して活性化させ、免疫力を上げる効果があるのです。さらに、近年の研究によって、LPSには以下のようなさまざまな効果があることもわかっています。

  • インフルエンザなどの感染症予防
  • 花粉症予防
  • 動脈硬化予防
  • 肌荒れ改善
  • アトピー改善
  • 認知症改善

LPSの取り入れ方

経口摂取すると体に良い効果をもたらすLPSですが、取り入れ方はとても簡単で、「LPSがたくさん含まれている食品を食べる」だけです。

LPSは穀物や野菜の皮のあたりに多く存在するので、未精製の穀物や皮付きの野菜を食べれば、効率的にLPSを摂取できます。とくに、玄米やれんこん、めかぶやほうれん草には多くのLPSが含まれているので、積極的に食事に取り入れましょう。これらの食品を毎回食事に取り入れるのは難しいという場合は、野菜などをそのまま乾燥させて粉末状にした青汁や漢方のほか、LPS配合のサプリメントを飲むのもおすすめです。

健康維持に欠かせないLPSを補給しよう

LPSは土の中などに存在するため、野菜や穀物、海藻類などに豊富に含まれています。しかし、農薬などによって細菌が取り除かれるとLPSも少なくなってしまうため、近年食事から取り入れられるLPSはどんどん低下していると言われています。そのため、サプリメントを利用したり、肌への効果を期待する場合は化粧品などを利用したりするのがおすすめです。

LPS活用事例

この記事の著者
やさしいLPS編集部

食用植物に共生するパントエア菌由来の“免疫ビタミン”LPSを提供する自然免疫応用技研株式会社です。当サイトでは、自然免疫、マクロファージ、LPSに関する情報と、当社の活動をお伝えします。

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