LPSと腸内細菌の関係とは?腸内のLPSだけでは免疫力アップの効果が弱いって本当?

LPS(リポポリサッカライド)は、グラム陰性細菌という細菌にくっついている物質で、体内に存在している自然免疫細胞の「マクロファージ」を活性化してくれることから、感染の防御や傷の修復、代謝調節の機能を高める作用もあり、健康維持には欠かせません。 ただ、LPSは腸内にも存在しますが、腸内のグラム陰性細菌のLPSのほとんどはマクロファージの活性化力が弱いため、免疫に対する作用を期待するなら外から摂取する必要があります。

そこでここでは、腸内のLPSや腸内細菌との関係、LPSの摂取方法などを、わかりやすく解説いたします。

腸内に存在するLPSについて

LPSは「リポポリサッカライド」の略で、日本語では「糖脂質」や「リポ多糖」と呼ばれています。土の中や空気中など、身近な場所に存在しているグラム陰性細菌の外膜に、LPSの脂質部分が埋め込まれるようにしてくっついています

このLPSは、体内に侵入した異物を攻撃してくれる自然免疫細胞の「マクロファージ」を活性化し、健康を維持する重要な働きをしています。もちろん、LPSは腸内にも存在していますが、食物と一緒に口から摂取するLPSとは作用や活性力が異なります。

LPSは小腸でも作用するのですが、小腸に存在しているグラム陰性細菌は、大腸に存在している菌に比べると1万〜1,000万分の1程度。当然、LPSも微量のため、高い作用は期待できません。さらに、大腸に存在している多くのグラム陰性細菌のLPSはマクロファージを活性化する力が弱いことが報告されています。便に含まれているLPSをマクロファージに加える実験を行ったところ、活性化が見られなかったのです。

実は、腸内細菌のほとんどは、「バクテロイデス」というグラム陰性細菌で、土壌などに共生している「バントエア菌」に比べると、持っているLPSのマクロファージを活性化する力が弱いのです。つまり、腸の中にいるバクテロイデスのLPSとバントエア菌のLPSとでは、マクロファージ活性力も異なるため、免疫力アップのためには、LPSは外からも摂取したほうがいい、ということがわかります。

腸内細菌由来のLPSは便秘を予防する

腸内にいるグラム陰性細菌にくっついているLPS(腸内細菌由来のLPS)は、マクロファージを活性化する見かけの活性は弱くても、腸の蠕動運動を促進する作用があり、便秘予防が期待できます。

腸内細菌由来のLPSは、細菌から離れて腸の筋肉マクロファージに作用すると、「BMP2」という、細胞の働きを調節するタンパク質の一種のサイトカインを分泌します。BMP2には、腸管の神経細胞を活性化する作用があり、腸の筋肉の蠕動運動を促してくれるのです。

腸の蠕動運動が促進されると便を送り出す働きが向上するため、便秘の予防に繋がるというわけです。

LPSと腸内細菌の関係

腸内グラム陰性細菌のLPSは、身体の中の細菌の増殖を抑える「生体内抗菌物質」を増やして、抗生物質の副作用を減らしてくれる作用があることが報告されています。

細菌による感染症の治療には、抗生物質がとても有効ですが、生体内抗菌物質を増やす役割がある腸内細菌も殺してしまいます。 抗生物質を飲むとお腹の調子が悪くなるのは、腸内細菌が死んでしまうからなのです。

腸内細菌が死ぬと生体内抗菌物質も減少し、抗生物質に耐えられる「抗生物質耐性菌」がどんどん増殖するため、薬が効かなくなってしまいます。生体内抗菌物質を増やしてくれる効果は、乳酸菌の成分にはありません。そのため、抗生物質を服用する時には、抗生物質で死んでしまう腸内細菌由来のLPSの不足を補うために、外から(口から)LPSも一緒に摂取するのがおすすめです。

LPSの摂取方法

土壌に含まれる細菌由来の成分のLPSは、微生物の多い環境で育った野菜や穀物、海藻類に多く含まれています。LPSが多く含まれている食品は、玄米や皮付きのレンコン、めかぶ、ほうれん草、きのこ全般など。特に含有量が多いのはめかぶやわかめです。

特に有機肥料や無農薬で育った物のほうがいろいろな細菌や微生物が付いている可能性が高く、LPSをより豊富に摂取できる可能性があります多くの種類の微生物が存在している海で育った海藻類も、農薬や化学肥料の影響がないためLPSが豊富に含まれています。

また、LPSは、穀類や野菜の皮の部分に多く含まれているため、穀類は未精製の物、野菜は丸ごと食べるのがおすすめです。ただし、LPSは長時間水にさらすと流出してしまうため、さっと水にくぐらせる程度にしましょう。加熱も、LPSが壊れてしまうことがあるため、できるだけ生のまま食べるか、加熱するのであれば短時間の調理にしてください。普段から野菜中心のバランスがとれた食事を心がけて、LPSを上手に摂取しましょう。

健康維持に欠かせないLPSを補給しよう

LPSは土の中などに存在するため、野菜や穀物、海藻類などに豊富に含まれています。しかし、農薬などによって細菌が取り除かれるとLPSも少なくなってしまうため、近年食事から取り入れられるLPSはどんどん低下していると言われています。そのため、サプリメントを利用したり、肌への効果を期待する場合は化粧品などを利用したりするのがおすすめです。

LPS活用事例

この記事の著者
やさしいLPS編集部

食用植物に共生するパントエア菌由来の“免疫ビタミン”LPSを提供する自然免疫応用技研株式会社です。当サイトでは、自然免疫、マクロファージ、LPSに関する情報と、当社の活動をお伝えします。

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