「緊張するとお腹が痛くなる」「ストレスがたまると下痢をしやすい」といった経験はありませんか。実は、脳と腸はお互いに影響を与え合っており、心の状態が腸の働きを変えることがあります。

また、腸には体を守る免疫細胞が多く集まっています。ストレスは腸の動きだけでなく、腸の粘膜や免疫の働きにも影響することが報告されています。〔1〕

このような脳と腸のつながりを「脳腸相関」と呼びます。当記事では、脳腸相関の仕組みやストレスで下痢・腹痛が起こる理由、腸と免疫の関係、日常生活でできる対策についてわかりやすく解説していきます。

脳腸相関とは?脳と腸はどうつながっている?

脳腸相関とは、脳と腸がお互いに情報をやり取りし、影響を与え合う仕組みのことです。

脳から腸へ指令が送られるだけでなく、腸の状態も脳に伝わっています。この双方向のつながりには、神経やホルモン、免疫に関わる物質などが参加しています。〔2〕

脳と腸はお互いに影響し合っている

大事な試験や面接の前に、お腹が痛くなった経験がある方もいるのではないでしょうか。

緊張や不安を感じると、脳からの情報が腸に伝わり、腸の動きが変化します。反対に、腸に不快感があると、その情報が脳に伝わり、不安などの感情に影響することもあります。〔2〕

脳と腸は、離れた場所にありながら常に連絡を取り合っている関係です。

脳と腸をつなぐのは神経だけではない

脳と腸をつなぐ主な経路のひとつが、自律神経です。

自律神経とは、心臓の動きや消化などを無意識のうちに調整している神経のこと。ストレスを感じると自律神経の働きが変化し、その影響が腸にも現れます。

さらに、脳と腸の情報交換には、ホルモンや免疫細胞がつくる物質も参加しています。〔2〕

神経が電話のように素早く情報を伝える一方で、ホルモンなどは体の中を巡るメッセージとして働きます。脳腸相関は、こうした複数の仕組みに支えられているのです。

ストレスで下痢や腹痛が起こるのはなぜ?免疫との関係は?

ストレスを感じるとお腹の調子が変わるのは、脳からの情報によって腸の動きや刺激の感じ方が変化するためです。

さらに、ストレスによって腸の粘膜の働きが変化することも報告されています。〔1〕

ストレスによって腸の動きが変化する

私たちの腸は、食べ物を消化・吸収しながら、内容物を少しずつ先へ送っています。

ところが、緊張や不安によって脳から腸への指令が変わると、この動きが乱れることがあります。ストレスによって大腸の動きが活発になることは、下痢が起こる仕組みのひとつです。〔1〕

また、ストレスによって腸が刺激を敏感に感じるようになり、腹痛やお腹の張りが現れる場合もあります。〔1〕

ストレスは腸の免疫にも影響する

腸は、栄養を取り込む場所であると同時に、食べ物とともに入ってくる細菌などに接する場所でもあります。

そのため、腸の粘膜には異物の侵入を防ぐ仕組みがあり、免疫細胞が体を守るために働いています。

研究では、ストレスによって腸の粘膜にある免疫細胞の反応が変化し、腸のバリア機能が弱まる仕組みが報告されています。〔1〕

腸のバリア機能とは、体に必要なものを取り込みながら、不要なものが体内へ入り込むのを防ぐ働きのことです。

つまり、ストレスと腸の関係を考えるときには、腸の動きだけでなく、体を守る免疫の働きにも目を向けることが大切なのです。

下痢や腹痛が続く場合は過敏性腸症候群の可能性も

ストレスと関係の深い腸の不調として知られているのが、過敏性腸症候群(かびんせいちょうしょうこうぐん)です。

過敏性腸症候群は、腹痛を伴う下痢や便秘などの症状が繰り返し起こる病気です。脳腸相関の変化が、その症状に関係しています。〔1〕

例えば、通勤中や外出先で急にお腹が痛くなり、トイレに行きたくなることがあります。

下痢や腹痛が続く場合、あるいは日常生活に支障が出ている場合は、医療機関で原因を確認しましょう。

腸内環境は脳や免疫の働きにも関係する?

脳腸相関を考えるうえで、近年注目されているのが腸内環境です。

腸の中には多くの腸内細菌がすんでおり、腸の状態だけでなく、免疫の働きとも関係しています。

さらに、腸内細菌と脳の間にも情報のやり取りがあることが研究されています。〔2〕

腸内細菌は脳にも影響を与える

私たちの腸には、さまざまな種類の腸内細菌が存在しています。

腸内細菌は、腸の中でさまざまな物質をつくり、腸の働きや免疫細胞との情報交換に関わっています。

こうした腸内細菌と脳、腸のつながりは「脳・腸・腸内細菌相関」と呼ばれています。〔2〕

お腹の調子だけを考えがちな腸内環境ですが、実は脳との関係からも研究が進められているのです。

腸の免疫は脳腸相関でどんな役割を担う?

腸には、体の外から入ってくる異物を見分け、体を守る免疫の仕組みが備わっています。

その働きを担う細胞のひとつが、マクロファージという免疫細胞です。マクロファージは、細菌や不要になった細胞などを取り込んで処理します。〔3〕

また、腸に存在するマクロファージは、腸の神経細胞と情報をやり取りし、腸の動きを調節する仕組みにも関わっています。〔3〕

腸の免疫細胞は、異物から体を守るだけでなく、腸が正常に働くための環境づくりにも参加しているのです。

 

腸の不調がストレスや気分に影響するのはなぜ?

これまで、ストレスが腸に与える影響を見てきました。しかし、脳腸相関は一方通行ではありません。

腸の状態も脳に伝わり、気分やストレスの感じ方に関係することがあります。〔2〕

腸の不調が脳に伝わる仕組み

腸で起こった変化は、神経などを通じて脳へ伝えられます。

例えば、お腹に痛みや違和感があると、その情報を脳が受け取り、不快感や不安を感じることがあります。〔2〕

さらに、不安が強まることで腸の動きや刺激の感じ方が変わり、お腹の不調が続く場合もあります。〔1〕

このように、腸の不調とストレスが互いに影響し合うことが、脳腸相関の特徴です。

腸の炎症と気分の関係

腸の状態が脳に影響する仕組みとして、免疫や炎症に関する研究も進んでいます。

炎症とは、体が異物や傷ついた部分に反応するときに起こる防御反応のことです。

免疫細胞がつくる情報伝達物質は、神経やホルモンとともに脳腸相関を構成する要素のひとつです。〔2〕

脳と腸のつながりには、神経だけでなく、体を守るための免疫の仕組みも関わっています。

脳腸相関を整えるには?腸と免疫を支える生活習慣

ストレスによるお腹の不調が気になるときは、腸だけでなく、心と体の両方をいたわる生活習慣を意識してみましょう。

腸の動きは自律神経と関係しており、腸内環境は免疫の働きとも関わっています。

ストレスをため込まず、リラックスする時間をつくる

忙しい日が続くと、緊張した状態が長引きやすくなります。

そんなときは、ゆっくり呼吸をする、好きな音楽を聴く、入浴するなど、自分が落ち着ける時間を取り入れてみてください。

ストレスによって変化する自律神経の働きは、腸の動きにも影響します。〔1〕

また、ストレスを感じたときには、免疫に関わるホルモンの分泌も変化します。〔1〕

心を休める時間をつくることは、腸の健康を考えるうえでも大切な生活習慣です。

十分な睡眠と適度な運動を心がける

睡眠不足が続くと、疲れが取れず、ストレスを感じやすくなることがあります。

まずは毎日の睡眠時間を確保し、できるだけ規則正しい生活を心がけましょう。

また、散歩や軽い体操など、無理のない運動を続けることもおすすめです。

睡眠や運動を含め、生活習慣を整えることは、心身の健康を維持するための基本です。

起床

食物繊維や発酵食品を毎日の食事に取り入れる

腸内環境を意識するなら、毎日の食事にも目を向けましょう。

野菜、豆類、海藻、きのこなどには食物繊維が含まれています。また、ヨーグルト、納豆、味噌などの発酵食品も、食生活に取り入れやすい食品です。

腸には多くの免疫細胞が存在し、腸内細菌と免疫の働きは互いに関わっています。

毎日の食事にさまざまな食品を取り入れ、腸の健康を支える食生活を心がけてみてください。

腸の自然免疫を支える成分「LPS」とは?

脳腸相関には、神経や腸内細菌だけでなく、腸の免疫も関わっています。そこで知っておきたいのが、自然免疫に働きかけるLPS(リポポリサッカライド)という成分です。

LPSは自然免疫の働きに関わる成分

自然免疫とは、体に生まれつき備わっている防御の仕組みです。その中心的な細胞のひとつが、異物を取り込んで処理するマクロファージです。

LPSには、このマクロファージを活性化する働きがあります。〔4〕

乳酸菌の成分やパン酵母のβグルカンと比較した実験では、LPSはごく少ない量でマクロファージを活性化するという結果が得られています。〔4〕

また、腸に存在するマクロファージは、腸の神経と情報をやり取りし、腸の動きにも関わっています。〔3〕

LPSによるマクロファージへもたらす効果

LPSはどんな食品に含まれている?

LPSは、私たちの身近な食品にも含まれています。

例えば、めかぶ、わかめ、玄米、あした葉などです。〔5〕

普段の食事でも出会っている成分なのです。

ストレスと腸の関係を考えるときは、心を休めることに加え、腸内環境や自然免疫を意識した食生活にも目を向けてみましょう。

玄米を主食に取り入れたり、わかめやめかぶを使った料理を食卓に加えたりすることで、LPSを摂り入れることができます。

毎日の食事の中で自然に摂れるLPS。腸と免疫の健康を考えるうえで、ぜひ覚えておきたい成分のひとつです。

参考文献・参考資料

〔1〕福土 審「ストレスと脳腸相関の法則を探る」心身医学 57巻4号、335-342(2017)

〔2〕公益財団法人腸内細菌学会「脳腸相関(brain-gut interaction)」

〔3〕自然免疫応用技研株式会社「便秘とLPS」

〔4〕自然免疫応用技研株式会社「LPS、βグルカン、ペプチドグリカンのマクロファージ活性化力と相乗効果」

〔5〕自然免疫応用技研株式会社「LPSラーニング(1)LPSとは」